FM三重『ウィークエンドカフェ』2013年11月9日放送

三重県で一番面積が小さな町が朝日町です。
大きさは、中部国際空港セントレアとほぼ同じ。
その町に10000人もの人が暮らしています。
平成18年から平成22年にかけての人口増加率は35.3%で、全国1位にもなりました。
とても住みよい町なんですね。

今回のお客様は、『朝日町歴史博物館』館長の後藤勝則さん、学芸員の竹内弘光さん。
『朝日町歴史博物館』の中には、朝日町の歴史と文化が詰まっています。
東海道のジオラマでは、焼きハマグリを売っている様子や1200年前に建っていたお寺、『縄生廃寺』の三重塔の模型なども展示されています。

館長の後藤さんは朝日町小向(おぶけ)地区のご出身。自慢はなんと言ってもまつり。
まずは、夏に行われる『八王子まつり』についてお話していただきましょう。

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       後藤勝則さん(左)、竹内弘光さん(右)

■八王子まつり!

後藤 『八王子まつり』には二十歳の頃から参加しているので、もう30年近くになります。
『八王子まつり』は、毎年8月13日の夜に開催。
山車で町を練り歩き、その後、神社で上半身裸の男性が、青年と壮年に分かれて、両手に藁束を持って、火をつけて叩き合うというお祭り。
だいたい40歳前後以上が『壮年』となります。
私たちの親の時代からそうしていたと言われています。
ちょうどお盆シーズンなので、毎年帰省してきた方が参加していますし、最近では中学生になったら参加してもらっています。

練り歩きで太鼓を叩く時は男女関係なく、女性も太鼓や鐘を叩いて参加していますよ。

夜の7時に公民館を出発し、町内を2時間ほどかけて練り歩き、小向神社に到着するのが9時頃。
それから青年・壮年のお祓いをして、叩き合い。
火の付いた藁で身体を叩き合うと、実際に熱いですが、身体にやや斑点が残る程度のやけどです。
それよりも、ススで身体が真っ黒になります(笑)
勇ましい、男のまつりです。
一時、青年団がなくなった時に衰退したのですが、やはり地域で存続したいとの声があり、平成18年に『八王子まつり振興会』を結成しました。
現在は、前夜祭で子どもたちに太鼓の叩き方を教えたり、ゲームをしたり・・・また、写真コンクールなどを開催して、祭りを存続させようと頑張っています。


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■博物館の展示物

竹内 常設展に展示してあるのが、弥生時代以降の土器。
博物館に入ってすぐのところに屋台があり、そのケースの中に入っています。
朝日町では弥生時代以降の遺跡が確認されているので、その頃から、この丘陵地帯で生活しはじめたことがわかっています。
朝日町を代表する、江戸時代の国学者である橘守部、萬古焼を再興させた森有節、日本画家の栗田真秀、水谷立仙という人物を柱に、展示を構成しています。

個人的に一番興味のある人物は、萬古焼の森有節ですね。
色鮮やかなピンク色の釉薬を使った焼き物なんですが、初めて目にした時、心を奪われました。
ピンク色を使っているのに、艶やかで優雅な焼き物に仕上がっているのです。
このような作品は、昔の古萬古にはないような技術を用いて焼いてるので、そういうチャレンジをした森有節は素晴らしいと思っています。


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■4つの地区に4つの城

竹内 私は大学時代に、発掘調査のアルバイトをしており、その時に土器を見つけたりする楽しさ、感動を知り、心を惹かれて、博物館の職員になろうと思いました。
土の中にはロマンと夢があるんですね。
ついつい地面に目を向けて歩いてしまう(笑)

後藤 そうですね、朝日町には歴史があるんので、地面を見て歩いていると、「ここを掘ったら何か出てくるんかな」と思わせるんでしょうね。

竹内 遺跡が出るのでは、と思うのは丘陵の先端部分。
現在、特に住宅で開発されている土地は見晴らしが良い。
おそらく昔の人も、見晴らしや眺め、また、雨などの被害を受けにくいような高台に住まれたのではないかと思います。
さらに朝日町は、昔から農業や田んぼが盛んなので、平野に近いところに住居を構えてきたと思われます。
現在の市街地は南北に東海道が走っており、その近辺を中心に町並みが形成されてきたので、そのあたりに遺跡があるのでは、と考えていますが、今は住宅が建っているので(笑)

後藤 朝日町は中世の戦国時代には、土豪によって4つのお城があったと言われているんです。
『縄生(なわ)』地区、『小向(おぶけ)』地区、『柿(かき)』地区、『縄埋(うずな)』地区、各1つずつのお城が。
朝日町の昔からの地名は、難しいものが多いのも特徴です。
お城は現在、住宅開発でほとんどなくなっていて、ただ1つ『柿』城跡だけが残っています。


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■朝日町の魅力

後藤 もともと農業の町なので、みなさんのんびりしていて優しい、良い町ですね。
柿城址跡を登ってもらったところがビューポイント。
町並みを見ていただければ、東海道の昔の町並みも望めると思います。
その時代に思いを馳せて、見て欲しいですね。

竹内 私は生まれが四日市でしたので、名古屋方面に向かう近鉄に乗っている車窓から、朝日小学校の『円形校舎』が見えるんですよ。
なので朝日町というと、『円形校舎』というイメージがありますね。

後藤 朝日町を知ってもらうには、東海道を歩いてもらい、『朝日町歴史博物館』で歴史を学んでほしいですね。

竹内 縄生地区の山の奥にある古代のお寺跡『縄生廃寺』まで足を伸ばしてもらえると、朝日町を堪能できるかなと思います。

後藤 博物館というとハードルが高く感じる方もいますが、できるだけ多くの方に来て欲しいので、ロビーではいろんな企画を考えています。
現在は『熊野古道~伊勢路を歩く』展を開催してます。
ロビーで熊野古道イラストマップを展示し、世界遺産登録十周年を迎える来年に向けて、みなさんに熊野古道をご紹介したいですね。
伊勢神宮から熊野本宮まで45枚のイラストで展示しております。
見ていただいて、ぜひとも熊野古道へ行くきっかけにしていただければ、と思います。